遺伝とがん
遺伝性腫瘍とがんの発症リスク
遺伝性腫瘍の種類
生まれつき、ある一つの遺伝子がうまく働いていなかったり、働きすぎていると特定のがんを発症するリスクが高くなります。各遺伝性腫瘍ごとに、発症しやすいがんの部位や、がんの組み合わせがあります。それらを「関連がん」と呼びます。また、がん以外の症状を発症する遺伝性腫瘍もあります。
例として、4つの遺伝性腫瘍を紹介します。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)
関連がん
乳がん
卵巣がん
前立腺がん
膵がん
原因遺伝子
BRCA1, BRCA2
リンチ症候群
関連がん
大腸がん
子宮内膜がん
胃がん
尿路がん
脳腫瘍
卵巣がん
原因遺伝子
MLH1, MSH2, MSH6, PMS2 ,EPCAM
リ・フラウメニ症候群
関連がん
骨肉腫
軟部肉腫
脳腫瘍
乳がん
副腎皮質がん
原因遺伝子
TP53
家族性大腸腺腫症(FAP)
関連がん
大腸ポリープ
大腸がん
胃のポリープ
胃がん
デスモイド腫瘍
原因遺伝子
APC
他にも、たくさんの遺伝性腫瘍があります。
また、遺伝性腫瘍の病的バリアント(がんを発症しやすい遺伝子の特徴)保持者であっても、全ての関連がんを発症するわけではありません。
病的バリアントとがんのリスク
病的バリアント(がんを発症しやすい遺伝子の特徴)を持っていても、全員ががんを発症するわけではありません。
MLH1遺伝子に生まれつき変化がある方のがんのリスクをお示しします。
リンチ症候群
Bさん(40歳、女性、大腸がん)
リンチ症候群の原因遺伝子であるMLH1に病的バリアント(がんを発症しやすい遺伝子の特徴)があり、リンチ症候群と診断されている。
リンチ症候群と診断されているBさんの場合は、MLH1遺伝子に病的バリアント(がんを発症しやすい遺伝子の特徴)のない人(海外データ)と比較すると、特に大腸がん、子宮内膜がんなどを発症する可能性が高くなります。
大腸がんの生涯罹患率
子宮内膜がんの生涯罹患率
リンチ症候群の4つの遺伝子とがん罹患率
引用:遺伝性大腸診療ガイドライン2020年版
どの遺伝子の病的バリアント保持者(がんを発症しやすい遺伝子の特徴をもつ方)かによって、発症リスクが高くなるがん種は異なります。
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