遺伝とがん
遺伝子とがんの関係
遺伝子は、体をつくる設計図
私たちのからだは約37兆個の細胞からできています。1つ1つの細胞の中には、からだの設計図となる遺伝情報が組み込まれています。遺伝子はDNAと呼ばれる物質でできており、約2万数千種類あります。
遺伝子には、それぞれの役割があり、協働して私たちのからだの構成や働きに関与しています。
人間の体を
細かく見ていくと・・・
約37兆個の「細胞」で、できています
「染色体」を拡大すると・・・
細胞の一つ一つに
「染色体」が入っています
「DNA」という物質が折りたたまれており、
そのうち「体をつくる設計図となる部分」を「遺伝子」といいます。
※この配列は32億対あると言われています
がんの発症と遺伝子
ヒトはそれぞれ、からだの形や性格が少しずつ異なるように、遺伝子も少しずつ異なる部分があります。がんを引き起こさないように活動している遺伝子が何種類かあり、それらに生まれ持った遺伝子の特徴を持つ人(病的バリアント保持者)は、遺伝子の特徴がない人と比較してがんを発症しやすくなります。その仕組みを次に紹介します。
がんの発症に関係する遺伝子の紹介
細胞が増えたり、
減ったりを調節する遺伝子
体を正常に保つために、細胞を適度に増やしたり、細胞が増えすぎないようにコントロールする遺伝子。
がん抑制遺伝子
がん化を防止する遺伝子。
がん遺伝子
がんを作る素となる遺伝子。
細胞の増殖が止められなくなる(がん化)。
遺伝子の変化によって「がん遺伝子」が生まれる
私たちの遺伝子は、日々さまざまなダメージを受けており、それによって正常な遺伝子が変化し、がん遺伝子が生まれています。
細胞が増えたり、
減ったりを調節する遺伝子
さまざまなダメージ
喫煙習慣、飲酒、加齢、紫外線、放射線、食生活、肥満、感染など
がん遺伝子に変化
がん抑制遺伝子の働き
がん化しそうな遺伝子に対して、がん抑制遺伝子が働きかけることで、がん化することを防いでいます。
細胞が増えたり、
減ったりを調節する遺伝子
さまざまなダメージを
受けている遺伝子
がん化しないで!
がん抑制遺伝子
がん化しない
生まれもった遺伝子の特徴が、がんの発症に関係している
がん抑制遺伝子は父と母から1つずつ子どもへ受けつがれるため、細胞の中に2つ(1対)あります。
もし、片方が機能しなくなってしまっても、1つあれば、がんを抑制します。
がん抑制遺伝子は
2つ(1対)ある
父由来
母由来
がん抑制遺伝子は
1つでも機能する
放射線、紫外線、喫煙、老化などのダメージによって、がん抑制遺伝子が途中から機能しなくなることがあります。
また、生まれつき、がん抑制遺伝子が1つしかいない(機能していない)人もいます。
これが生まれもった遺伝子の特徴で、がんの発症しやすさに関係しています。
生まれつき1つ!
がん抑制遺伝子
〈用語説明〉
病的バリアント
遺伝性腫瘍の原因となる生まれもった遺伝子の特徴のことを、医療用語では、遺伝性腫瘍の「病的バリアント」と言います。
病的バリアントをお持ちの方を「病的バリアント保持者」と呼びます。
遺伝性腫瘍の
病的バリアント
病的バリアント
保持者
遺伝性腫瘍の病的バリアント保持者は、がん抑制遺伝子が1つしかないため、2つ(1対)ある人よりも早い時期にがんを防止する機能がなくなる可能性があります。
ただし、病的バリアントをもっていても全員ががんを発症するわけではありません。
遺伝性腫瘍ではない方のがん抑制遺伝子の変化
0年
30年
60年
遺伝性腫瘍の病的バリアント保持者のがん抑制遺伝子の変化
がん抑制遺伝子が機能しなくなり、
若くしてがんになる可能性があります。(遺伝性腫瘍)
0年
30年
※掲載されている年数はイメージです。必ずしも30年、60年で遺伝子が変化するわけではありません。
遺伝性腫瘍の発症には、
生まれもった遺伝子の特徴(病的バリアント)が関係しています。
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